FACULTY OF ENGINEERING
CONTENTS

ミリ波工学

常光康弘准教授

人の目に視えない力を可視化するミリ波帯電波を用いる観測技術
Q
なぜこの研究を?
A
こんにちは。皆さんも興味があるものに出会えているでしょうか?
わたくしの場合は、小学生の頃にその出会いがありました。
King of Hobbyと世界に言われるものに『鉄道模型』と『アマチュア無線』があります。わたしが夢中になったのは鉄道模型でした。

小学生の頃から電子システム工学技術の結晶ともいえる鉄道模型に魅了されました。
あるときは電車を走らせてはゆったりと眺め、またあるときは汗をかきながら押し入れを改造した鉄道模型レイアウトに線路を納得いくまで組み替えて繋いでいったりしていました。

信号機や踏切のセンサーは当時『光センサー受光部(光も電磁波の一種)』でして、ベニヤ板を地面にした所に配線をするために、電動ドリルで穴を穿ったり、電気信号配線をするためにハンダゴテを握ってハンダ付けしたりをする充実した日々を小学生時代からはじめました。
この時期はNゲージとよばれる精密電気電子機械の塊である鉄道模型を主に嗜んでおりました。

それ以前には幼稚園の頃にはHOゲージのSL機関車を車輌だけ頂いたので大事に眺めたり(当時レールや走行システムは値段が子供に買える値段では無かった)、プラレールという電池で動く手軽に自由なレールによる組み合わせで楽しめるシステム(子供でも大人でも楽しめる)は開始しており、更に鉄道模型に熱心になった将来のレールを自分で敷設していた時期だと感じます。

そうです 線路は敷かれているものでは無く、線路は自らで敷くものであるという哲学を小学生時代に遊びから学んだと思います。

自分自身で興味ある対象を研鑽して究めていく…。そんな考え方が自然と研究への道に繋がっていった(≒進化したともいう)のです。
もうひとつの『アマチュア無線』も中学生の頃に免許を取って開局運用していたので世界で趣味の王様といわれる両方ともに縁があったことが今現在取り組んでいる研究対象へと繋がっていったわけです。
Q
何処が良いのか
A
いま取り組んでいるミリ波帯電波を用いる観測技術の一番の利点は、人の目には視えない力を可視化する事で観測し、制御することで日々の暮らしを安全・安心にしていけるシステムを生み出す事が出来ることです。
例えば電波は電磁波の中でも周波数が3(THz)以下のものを呼称するとして利用しています。
その中でもミリ波帯は周波数が30(GHz)-300(GHz)の範囲にあるものを指します。

暮らしの中にある応用例としては、自動車に搭載して前方の車にぶつかるのを防ぐ為のレーダーや、鉄道の踏切等に侵入した物体を検知して知らせて事故を防ぐセンサー、情報を光の速さでたくさん送ったり受けたりできる超高速無線装置システム(小惑星探査機はやぶさ2に搭載されているアンテナ等)があります。
Q
造ったモノ
A
写真1に紹介するのが、2015年02月に試作して解析と実験で良好な特性の一致をみたミリ波帯(38GHz)導波管スロットアレーアンテナの数種類です。
矩形導管内を伝わる電波を設計した寸法のスロットとよばれる穴からシャワーのように徐々に電波をだして複数のスロットからでてくる電波が交わって正面方向にレーザービームのような鋭い電波が向く方向を形作ることができます。
このスロットとよばれる電波が出ていく穴の組み合わせによって縦・横・45度に傾斜・さらに回転して振動しながら進んでいく電波を作り出すことができるのです。

小さい頃から夢中になっていた鉄道模型のこころに通じるものがありますね。
写真1. 人の眼には視えないミリ波帯電波を用いた観測技術を実現する眼にあたる試作品写真1. 人の眼には視えないミリ波帯電波を用いた観測技術を実現する眼にあたる試作品
Q
現在の研究
A
現在進行形で、いま紹介したミリ波帯導波管スロットアレーアンテナを中心とした、人間の目には視えない力である電波を観測して制御する技術について日々常光研究室メンバーや連携している大学・企業とともに取り組んでいます。
電磁波で世の中できているといっても過言では無く、レントゲンのX線、こたつの赤外線、スマートフォンのマイクロ波、人間の眼で見える可視光線等々、周波数が違っているだけとも言えます。

目に視えない存在を信じますか?と問われたら自信を持ってこう答えるのもありです。
『 人の眼によって観察できるのは、僅かに過ぎない。
殆どは人間の眼には視えないもので出来ている。
携帯電話の電波もテレビの電波も、暖かい炬燵の赤外線も視えなくてもそこにある。
視えないものを可視化して制御することで出来る事は沢山あって楽しいよ 』
と。
皆様も心躍るなにかに出会うことを祈念致します。それはとっても素敵な事だと思うのです。