FACULTY OF ENGINEERING
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イメージセンシング

諸角建教授

画像を使って何かを計ろう
皆さんもデジカメやスマホで写真を撮ったことがあると思います。

昔はフィルムを使ったカメラで撮影していたので、写真を撮ってもすぐには見ることができませんでした。フィルムを現像してそれから印画紙に焼き付けて、初めて見ることができたのです。しかし、今では、その場で撮った写真が見られます。昔より、写真は身近で簡単になりました。

さて、この写真ですが、デジカメやスマホの中では、デジタルデータとして保存されています。私たちは、それを画像と呼んでいます。
記録の方式(フォーマットと呼びます)は、さまざまありますが、1つの点(これを画素と呼びます)は、基本的に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つのデータから構成されています。

人間の目も、赤、緑、青に反応する視細胞により色が見えます。 これらの視細胞は、錐体と呼ばれています。私たちの識別できる光の波長の範囲は、約380~780nm(ナノメートル)です。 生物によって、その範囲が異なっていたり、錐体の種類の数も違っていたりします。 犬や猫は錐体が2種類のようです。また人間とは識別できる波長域も異なると言われています。 また、ミツバチなどは紫外線も識別できるようです。

デジカメは、レンズから入射した光をCCDイメージセンサー(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOSイメージセンサー(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)と呼ばれる撮像素子を使って先のR、G、Bに分けて記録しています。CMOSはLSIの構造の種類で、CPUもCMOSでできています。
記録されたこのR、G、Bの値を使って、いろいろな画像処理や解析を行っています。
画像はRGBからできている
Q
現在の研究
A
「不可視情報の可視化と潜在情報の抽出」というところでしょうか。 見えないものを見える形に変えたり、見えているものからさらに新しい情報を取り出したり。 具体的な内容をいくつか紹介します。

影除去について

背景差分法という画像処理の手法があり、これは「動きのあるもの」を検出する際によく利用される手法です。

背景画像と呼ばれる「動きのない」画像と、何か「動きのあった」画像との間で、画素ごとに画素値の差を取ります。「動いている物体が無ければ、画素値の差は0であり」、「動きのあった場所の画素値の差は0にはならない」、ことになります。このように、背景画像との差を求めることで、移動する何らかの物体を見つけることができます。しかし、背景差分法を利用する上で問題となるのは、移動する物体についてまわる影の存在です。物体が光を遮ることにより影ができます。

この影も移動する物体の一部とみなされるため、移動物体を特定する際にその影響が出てしまいます。影をいかにして除去するかが重要となるわけです。また、曇天時などのように直接太陽が当たっていない場合でも、ぼんやりとした影ができていることが多いのです。
一見しただけでは影の存在はほとんど分からない画像(下図(a))であっても、差分処理をすることにより、足下に影が現れてしまうのです(下図(c))。

実はこの影、先ほどのR、G、B値を使った処理では、なかなか除去することができないのが現状です。
そこで、R、G、Bの値から、HSV(色相(H:Hue)、彩度(S:Saturation)、明度(V:Value))やHLS(色相、明度(L:Lightness)、彩度)と呼ばれる表色系(色を表す体系)に変換して解析を行います。
画像絶対値

信号の認識・道路の位置認識

目の不自由な方のために、信号機の状態を認識して伝えたり、現在道路のどの位置にいるかを伝えるシステムの設計・作成を行っています。

まず、交差点で渡りたい方向をデジカメで撮影します。そして、その画像内から色情報を利用して信号機を見つけます。いま「青信号」なのか「赤信号」なのかを伝えます。また、現在の信号に状態の残り時間を表示するバーのついている信号機については、残り時間を計算してユーザに伝えます。さらには横断歩道の長さ(渡るための所要時間)も伝えます。また、現在、自分が道路のどの位置にいるのかを知らせます。そのため、今いる位置が車道なのか、歩道なのか、などの位置を特定します。最終的には、これら機能を実装したスマホのアプリケーションにしたいと考えています。
青字

人間の顔認識と特定外来生物の認識

最近では、いろいろなところで顔認識が盛んに行われています。

空港での日本人出帰国審査(実証実験:成田空港と羽田空港で平成26年8月4日から9月5日まで実施)やアミューズメント施設やコンサート会場への入場チェックなど・・・。
現在は、日本人と他の人種との判別を機械学習という方法で検討中です。
また、特定外来生物(哺乳類)の認識を顔認識システムの応用として検討中です。

画像はさまざまな場面で利用され、知らず知らずのうちに私たちの身の回りで無くてはならないものになっています。 いろいろな画像がどのようにして作られているのか、どのように利用されているのか、また、どのように私たちの生活に貢献しているのか、を考えてみるのも良いのではないでしょうか。