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理論物理学
鈴木康夫教授

ひもの物理学
私の研究テーマはひもの物理学です。私の専門は理論物理学です。

理論物理学の発展のプロセス

19世紀の理論物理学のメインテーマは点についての物理学でした。太陽の周りを回る惑星の運動を考える時、太陽や惑星を質量を持つ点(質点)として考えました。 また、地上の物体の運動も物体を質点として捉えてその運動を研究し、成功を納めました。 もちろん、大きさを考えて物体の回転運動をも研究しましたが、大きさのある物体についても剛体と言って質点の集合として考えました。

20世紀に入ると、そのたくさんの質点が別々に運動する場合について統計的に考える統計力学や質点である分子原子が規則的に並んでいる固体について量子力学を用いて取り扱う固体物理学が盛んに研究されるようになり、半導体などを通して、科学技術が日常の生活の中に取り込まれ、成功を納めました。

20世紀後半になると分子原子を自由に操ってひも状の高分子を作る化学が発展し、そのような高分子からなる生体を研究する生物物理学も発達してきました。

これらの物質は固体に比べると一般に柔らかい性質を持っているので、溶液なども含めて、ソフトマターと一般的に呼ばれています。

21世紀になると、このようなひも状の物質ソフトマターについての研究が盛んになり、電気を通す高分子や光を発する高分子などが作られるようになり、高分子バッテリーは携帯電話に、高分子液晶はテレビモニターに使われるようになり、導電性高分子の研究はノーベル賞ももらいました。

理論物理学 鈴木康夫教授_01

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ひも状の物体を取り扱うには場の理論という特別な数学を使います。電磁気学から発展した数学で、量子力学でさらに発展した数理科学の方法です。 私たちが行っているソフトマターの研究は主に場の理論を使っています。19世紀に点として扱われていた物体も、20世紀に入ると量子力学として波の性質も合わせもつと考えらました。 その取り扱いには場の理論が必要で、時間や温度を考えあわせると質点の量子力学もひもの物理学と同等の場の理論として取り扱われます。
そこで、固体物理学の発展に伴って、場の理論が発展しました。それをひも状の高分子に適用して、オムツの素材に使われる吸水性の物質や食品などについての基礎理論を研究しました。 これらは分子原子のひもが水の中に溶けたもので、基本的に私たちの体の中の物質も同じような環境にあります。例えば目のレンズもメガネやカメラに使われるガラスのレンズとは違って、ひも状の生体高分子と溶液からなるソフトマターです。

高分子がつなぎ合わさったものの中に溶液が染み込んだものを高分子ゲルと言います。動物の目のレンズや食品はこの高分子ゲルの状態になっています。気体の状態方程式は分子原子という質点の集まりから説明されるように、高分子ゲルの状態方程式は、高分子というひも状のものの集まりから説明されます。

現在の研究

21世紀に入り、今まで空間3次元時間1次元の宇宙の中で点と考えられていた原子や分子を構成する素粒子(電子やニュートリノなど)ももっと高次元の時空間(今のところ11次元と考えられています)の中のひも状のものであると考えられ始めました。

現在、同僚の関野先生と協力して、銀河系の中心などにあるブラックホールの統計力学的な性質についてひもの物理学を使って研究しています。

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