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素粒子理論
関野恭弘准教授

素粒子と宇宙

なぜ、研究を?

私は素粒子理論の研究をしています。素粒子とは、それ以上分けられない、最も細かい物質のことです。 物質は原子から出来ており、原子は原子核と電子から出来ています。 さらに、原子核は陽子と中性子から出来ていて、陽子や中性子はクォークから出来ていることが、20世紀に明らかになりました。

現在、素粒子と考えられているのは、表1に掲げられたものです。これらは本当に素粒子なのか、また、これら以外に素粒子は無いのか、そして、素粒子はどのような物理法則に従うのか、といった問題を追究するのが、素粒子理論という分野です。

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表 1. 現在知られている素粒子(提供:KEK)

素粒子の実験と理論

小さなものを調べるには大きなエネルギーが必要になります。これは、火薬(分子や原子の結合エネルギーを利用した化学反応)より、原子力(原子核の結合エネルギーを利用)の方が強力だということからも理解できると思います。 大きなエネルギーを得るには大規模な設備が必要です。現在、最高エネルギーを持つCERN(欧州原子核研究機構、スイス・ジュネーブ)のLHC(大型ハドロン衝突型)加速器は、山手線一周と同じくらいの大きさがあります。図1の白線部分の地下にある、図2のビームパイプの中で陽子を加速させて衝突させ、出てきた粒子を検出しています。

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図1. LHC加速器の空撮写真(提供:CERN)
LHC加速器でヒッグス粒子が発見されたという2013年のニュースを覚えている方も多いと思います。ヒッグス粒子は、1960年代の南部陽一郎博士らの研究などにより発展した「自発的対称性の破れ」という機構により物質に質量(重さ)を与える、非常に重要な素粒子です。LHCによる発見以前は、発見されていない粒子の存在をなぜ皆信じているのか、という疑問を持つ一般の方が多かったようですが、その理由は、ヒッグス粒子が存在すると、理論が「くりこみ可能」になるためです。

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図2. LHC加速器のビームパイプ(提供:CERN)
1940年代の朝永振一郎博士らの業績をはじめとする多数の研究により発展してきた、くりこみ可能性という概念をきちんと説明するのは難しいですが、一言でいうと、理論が低エネルギーから高エネルギーまで広い範囲で有効である、という性質のことです。現代の素粒子物理では、理論の予言をすぐに実験で確認するというわけにはいきませんが、理論家と実験家がそれぞれ出来ることを追求し、影響を与えあって物理が発展するという点は、昔も今も変わりません。

素粒子物理の現在の課題

ヒッグス粒子は、「パズルの最後のピース」ともいわれており、その発見により「標準模型」と呼ばれる素粒子のモデルが完全に確立したと考えられています。 ただし、標準模型には様々な不満足な点があります。 その1つは、つい最近ノーベル賞を受賞された梶田隆章博士らの研究により明らかになったニュートリノの質量が無視されている点です。 2つ目は、標準模型には約20個のパラメータ(実験結果から決定すべき物理量、例えば、電子の質量)があるという点です。 それらの多くは、より基本的な理論によって説明されるのではないかと考えられます。3つ目は、重力(万有引力)が無視されている点です。 重力は他の力に比べて非常に弱いため、通常の条件で素粒子を考えるときには無視できますが、宇宙初期の高温、高密度の状況では重要になります。原子や分子以下の世界は量子力学によって記述されていますが、重力の量子論はまだ完成していません。

素粒子実験には巨大な設備が必要とされるため、LHC加速器より大きなエネルギーを実現するのは容易ではありません。 そこで、標準模型を超える物理へのアプローチとして現在注目されているのが、宇宙の観測です。宇宙には、宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)と呼ばれる光(宇宙が現在の1000分の1程度の大きさだったときに放たれた光)が満ちています。 全方角から非常に均一な温度(約3K=マイナス270℃)を持った光が届いていますが、わずかな(10万分の1程度の)温度の揺らぎが観測されています。この揺らぎは、宇宙初期の高エネルギー物理に関する貴重な情報を担っており、その解析から、宇宙初期に「インフレーション」と呼ばれる急激な膨張期があったことなどが明らかになっています。

私の研究テーマ

私は、超弦理論(超ひも理論)の研究をしています。 超弦理論は、重力を含めた統一理論として1980年代以降発展してきた理論で、重力の量子論への最も有力な試みと考えられています。 特に、超弦理論からどのような初期宇宙像が導かれるかを明らかにし、CMBの観測によりそれを検証することを目指しています。 また、ブラックホールに落ちた物体の情報は失われるのかという問に、超弦理論により答を出すことを目指しています。 これらに関する研究を、本学着任前に所属していた高エネルギー加速器研究機構(KEK)とスタンフォード大学の研究者や、本学の鈴木康夫先生らと共同で行っています。

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