FACULTY OF ENGINEERING
CONTENTS

非線形回路・システム

三堀邦彦教授

歩行者の流れ
Q
なぜこの研究を?
A
現在、歩行者の流れの研究が注目を集めています。
その目的は、歩行者の流れの性質を理解し、それを都市や街の設計に生かそうというものです。
私は現在こうした分野に興味を持ち、特にマルチエージェントシステム(MAS)とよばれるテーマに取り組んでいます。

Q
MASって何?
A
図1はMASの例です。MASはお互いに影響を及ぼし合う複数のエージェントで構成されます。
エージェントはプログラムの中で人間のような役割を果たす存在であり、周囲 から得られた情報を元に自分の行動を決定します。この言葉は機械・電子・情報 の分野にまたがって使われます。

この図の三角形がエージェントであり、エージェントは歩行者のモデルです。
各エージェントは図2のように周囲から情報を集め、それを用いて自身の行動を決定し、この平面を移動します。
図1 歩行者の流れのMAS図1 歩行者の流れのMAS
図2 歩行者の行動ルール図2 歩行者の行動ルール

Q
何を作ったの?
A
デジタル回路を設計、作成
通常MASはプログラムで表現されます。 一方私の研究室では、このMASを表現するデジタル回路を設計し、実際に作成しました。

図3がそのシステム全体です。 図の上半分はFPGAと呼ばれるデジタル基盤です。この基盤をパソコンに接続し、パソコンから一連の指示を送ります。

すると、この回路の中にMASのデジタル回路が構成されます。
図3 MASを表現するデジタル回路図3 MASを表現するデジタル回路

Q
ホントに動くの?
A
この図の下半分はLEDマトリックスと呼ばれる出力装置です。
図4は、この装置を使って確認した実験結果です。左からこのMASの1ステップ目・2ステップ目・3ステップ目の結果です。
移動している丸はエージェントであり、移動していない丸は壁を表しています。

ここでは上に移動するエージェントU1と下に移動するエージェントD1が、互いに衝突を避けながら移動する様子を確認できます。
図4 デジタル回路の実験結果図4 デジタル回路の実験結果
Q
この先どうしたいの?
A
広い空間での歩行者の流れの性質を明らかにする
歩行者の流れのような多数の物の動きを追う計算は、発展の一途をたどる現在のコンピュータにとっても大変なお仕事です。 上で説明した回路は、この用途のための専用計算システムとして利用できます。

私の最終的な目標は、図5のように広い空間での多数の歩行者の流れの性質を明らかにすることです。

MASはこうした目標に対して「特長をとらえた簡単なシステムを作って、動かしてみたい!」と考える人たちにとって、欠かせない道具となるでしょう。
図5 広い空間での多数の歩行者の流れ図5 広い空間での多数の歩行者の流れ