接着・設計
木原幸一郎教授
様々な分野でつかわれている接着接合
接着接合部が破断する時に必要なエネルギーの精密測定法の研究をしています。この研究は、強力な接着剤や耐久性のある接着剤などの開発に弾みをつけます。
Q
なぜ、研究を?
A
何かものを壊してしまったとき接着剤で直そうと思ったことはありませんか。
実際、のりや木工用の接着剤などは多くの家庭にあって、こどもたちでも接着剤はものをつなぐものとして認識し、利用していることが多いのではないかと思われます。しかし、いざ使ってみると非常にやっかいであったりします。
例えば、付けようと思っていないところに付いてしまうと、なかなかとれません。下手に触ると手の汚れやほこりが付いて汚くなっていきます。瞬間接着剤をこぼして、指と指をくっつけてしまった時は、もうこのままはがれないのではないかと絶望すら感じます。それなのに、やっとくっつけたと思ったものは、持ち上げた途端にばらばらになったりします。慎重に一日ほうっておいて、完璧だと思ったのに、数ヶ月で壊れたり、3日も持たなかったりすることもあるかもしれません。このような体験をすると、接着剤を使った接合方法は、どうも信頼できないという気になってきます。
ところが、接着剤を使った接合、接着接合はエレベータや自動車、飛行機など様々なそして重要な部分に使用されています。もちろん、このような場合にはその辺にある適当な接着剤で適当に付けるわけではありません。まず、付けたい材料に合った接着剤を慎重に選定します。ここで失敗すると接着剤は付けたい材料からペリッと簡単にはがれてしまいます。ここをクリアしたら、次に接着面積や接合部の形状など十分に検討し、さらに多数の破壊試験なども行って、安全を確認していきます。この作業は非常に手間のかかるもので、ねじの様に計算で簡単に決定できるものではありません。その代わりとして、接着接合は見た目がきれいであったり、軽量にできたり、特殊な材料を接合できたり、様々なメリットを得られるのです。
このため、接着剤の強度を簡単に測定する方法が必要なのです。
Q
どうすればよいか
A
材料の強度を測るには一般に材料自体を引っ張ったりねじったりして測定します。
この方法は円筒を突き合わせて接着した試験片に引っ張りやねじり負荷を加える方法です。つけたい物と接着剤の材料の性質が違うので、多くの場合、接着層部分だけが大きく変形し、特に引っ張りの場合、接着層内でかかる力が一定にならないという問題点があります。それでもある程度接着剤の強度を調べることができます。引張強度についてはこれで良いのですが、問題はせん断強度の測定にあり、この試験片をねじることができる試験機を持っている人が少ないのです。
現在は厚い板を重ね合わせて接着し、これを引っ張ることによりせん断強度を測定できないか試みています。
Q
どうやって調べているか
A
簡単に接着剤の強度を調べる方法を提案することが目的ですが、このためには様々な方法と比較して、提案する方法が妥当であるか調べなければなりません。
福祉用ロボット、掃除ロボット、検査ロボットなど、いろいろなロボットを開発しています。左の写真は二足ロボットの2号機です。高さ約800mm、関節の総和12(片足6)のロボットで、1号機の改良をしたものです。このロボットは、大学4年生が自分の足の長さを測定し、それを縮小して作りました。モータとギアだけは市販品を購入しましたが、それ以外は全て素材を加工して作りました。特別な歩き方を研究するために、上部の緑色の板(モータの制御回路)まで作っています。このようなロボット開発ができる大学は多くないと思いますよ。
Q
接着・設計研究室では
A
接着剤の強度を簡便に調べることは非常に重要なことなのですが、接着剤の強度を調べても、例えば壊れたものを接着剤だけで完全に直すことはできません。
接合はものづくりには欠かせません。接着接合法を身につけることは新しいものを開発、設計する上でプラスになると思います。
接着を通して新しい世界を創造してみませんか。