FACULTY OF ENGINEERING
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航空宇宙・材料力学

志村 穣教授

ものづくりを支える接合技術,社会インフラを守る診断技術を考える
航空機や自動車等は、様々な材料を適材適所に配置し構造を成していますが、これらの材料を強力につなぐ方法が必須です。社会インフラ老朽化による事故を未然に防ぐ対策も急務と言えます。これらの課題解決を目標に掲げ、研究を進めています。
Q
なぜ、研究を?
A
工学上の問題解決の糸口を見つけたい
機械構造物の製造現場では材料と材料を繋げて構造体を成す工程が必要になります。自動車や航空機の場合では多様かつ複数の材料によりボディを構成するマルチマテリアル化の流れにあり、強力な接合方法が望まれています。接合方法には様々ありますが、本研究室では主に接着剤を用いた接合方法を対象とし、より強力な接合を実現することでものづくりに貢献したいと考えています。一方で、先人達のものづくりの結晶が寿命を迎えつつあり、国内の橋梁等の社会基盤施設は老朽化による問題が顕在化しています。そのため本研究室では、老朽化インフラ等の安全性評価方法の確立を目指し、その評価基準として用いられる破壊力学パラメータの実験解析に取り組んでいます。
Q
どこがおもしろいか
A
結果に対する考察や検証を自由に行えるところ
本研究室で対象とする研究課題では試験片製作や実験実施等を伴います。前向きな結果が得られない場合もしばしばあります。想定外の結果が出たとしても、それが新たな知見に繋がることがありますので無駄とは考えません。また、コンピュータ・シミュレーションによる解析結果は様々な物理量を可視化できますので、とても有用で考察の深化を促します。実験結果とシミュレーション結果が一致すれば、事象の予測に繋がり研究の可能性が広がります。
Q
研究の成果
A
筆者の研究の一部を紹介します。
図1は「材料にき裂があるときの危険性を把握する研究」で、その危険性を応力拡大係数という数値で評価し、安全か否かの指標に役立てるものです。応力拡大係数解析用のひずみゲージ(図1上段)を模擬き裂の先端付近に貼付して実験(図1左下:ここでは曲げ試験)、解析すると応力拡大係数(図1右下)を得ることができます。この研究は国内の老朽化基盤施設の安全性評価に貢献できると考えています。
図2は「接着継手の強度向上に関する研究」で、接合部分の形状の工夫に焦点を当てています。ポイントは波形状による接着面積の増加と、傾斜角58°部分を付与している点です。接着接合した継手に引張りを負荷した場合(図2最上段)のシミュレーション結果(図2左下カラーコンター)によると、④SWJ-R7.500の場合は応力集中が抑制(赤色部分の消失)され、引張負荷実験結果(図2右下棒グラフ)においてもSWJ-R7.500の破壊荷重が最も高くなっており、この形状の有用性がわかります。
なお,私の研究者情報は下記URLより確認できます。
https://researchmap.jp/read0063306

20250416_shimura.j_02
20250416_shimura.j_03
Q
航空宇宙・材料力学研究室のこれからの研究
A
航空機や車両の製造に寄与する接合技術,3Dプリンタの活用による機能性材料の開発と機械要素への展開
現在は接着接合関連、ひずみゲージを用いた破壊力学パラメータの解析に関する研究が主流ですが、今後は接合方法として接着以外の手法(例えば、超音波溶着)や3Dプリンタによる複合材料歯車製作とその強度評価などを検討しています。
本研究室では、3DCADやCAE(コンピュータによる工学解析)、試験片製作および各種実験を行いますので、手先を動かすことやものづくりが得意な人は本研究室で自身の能力を発揮できると思います。また、本研究室で学んだ事は自動車やオートバイ、航空機等の設計・開発に寄与しますので、これらの分野に興味、関心がある人に向いているかもしれません。ちなみに、日本の接着接合技術は欧米に遅れを取っています。この現状を打開するために一緒に研究しませんか。