用品設計
阿部眞理教授
日々のものをデザインする
現在、私たちが取り組んでいる研究のひとつに「減災」をテーマとしたものがあります。阪神・淡路大震災や東日本大震災といった大きな災害が起きましたが、デザインの立場から何かできないか、と思い、「減災」をテーマとした生活用品を考えています。これまでに提案したものは、①開発した軽量材料による家具、②災害時に役立つ機能を持ったまとい布、です。
① 開発した軽量材料による家具
まず、①開発した軽量材料による家具です。軽い材料を開発し、その材料で家具をつくりました。軽い家具は、たとえ地震によって家具が倒れたとしても、重い家具に比べ、下敷きになってけがをしたりするリスクを軽減することができます。私たちは、開発した軽量材料を使って、ブロックシェルフという収納家具と2種類のいすをデザインし、試作しました。開発した材料は、木材の表裏材の間に波形の薄い木材を挟んだものです(図1)。波形の薄い木材には赤や青などのカラーリングを施すこともできるので、見た目にもカラフルで楽しい家具をつくることもできます。ただ軽いだけでないデザイン性を考えた提案はとても大切です。図1の材料を使って試作した家具を紹介しましょう。
次は、2種類のいすです(図3)。どちらもいすの座面に図1の波形の材料を使っています。赤と青の色をつけてカラフルないすに仕上げました。このいすも軽量なので移動させることが容易です。
② 災害時に役立つ機能を持ったまとい布
次に、②災害時に役立つ機能を持ったまとい布です(図4)。これは、普段は寒い日に着る、ポンチョ型の防寒用コートですが、右側は、万が一災害が起こった際に、オーバーオールに形を変え、足もとから暖かく過ごすことができる衣服となります。左側は、袖の部分を取り外すことができ、取り外した部分は頭巾や物を入れる袋になります。東日本大震災の起きた日は帰宅困難となった人たちがたくさんいましたが、とても寒い思いをしたという経験からこのアイデアが生まれました。
「減災」をテーマとした研究はまだまだこれからです。デザインの立場からできること、やるべきことを進めていきたいと思っています。
「減災」をテーマとした研究はまだまだこれからです。デザインの立場からできること、やるべきことを進めていきたいと思っています。